「遊ぶ」という言葉を聞くと、少し肩の力が抜けませんか。
遊ぶとは、競争でも評価でもなく、ただその場に身を置き、世界とゆるやかにつながる時間のことだと思います。外に出て風を感じること、公園でぼんやりすること、好きな場所に足を運んでみること。それだけでも十分に「遊び」です。
診療の場でひきこもりや不登校の方々からいろんな話を聞き、いろんな思いを共有します。外に出ることが怖い、学校に行くことがつらい、朝が来るのが苦しい。そんな現実の中で、無責任な「頑張れ」という言葉は時に刃のように感じられることがあるかもしれません。一般論として、「二次障がい」につながるから気楽に「頑張れ」と言ってはいけないなどという話もよく出ます。
ただ、私は「頑張れ」という言葉そのものが悪いのではないと思っています。大切なのは、誰が、どんな関係性で、どの状態の相手に伝えるのかということです。相手の呼吸を感じ、表情を見て、「あなたなら大丈夫だよ」「今日はここまででいいよ」と心から言える関係性があれば、「頑張れ」というその言葉はプレッシャーではなく、支えになります。人は、信頼できる誰かからの「大丈夫」によって、不安が少しだけ和らぐことがあります。
最近は、学校でも家庭でも「無理に登校を勧めない」という流れが強くなっています。それ自体は状況によっては大切な配慮です。しかし、気持ちが少し整ってきたときに、「一緒に行ってみようか」「ちょっと外の空気を吸ってみようか」と声をかけることまで避けてしまうと、社会との接点を失い続けてしまうこともあります。寄り添うとは、ただ見守ることだけではなく、時に隣に立って小さな一歩を促すことでもあるはずです。「頑張れ」は命令ではなく、伴走の言葉です。一人で背負わせるためではなく、「一緒にやってみよう」と手を差し出す言葉です。だからこそ私は、「遊ぶ」ことを勧めたいのです。
学校でも仕事でもなく、まずは「遊び」からでもいいと思います。公園に行く、川辺を歩く、地域のイベントに顔を出してみる。誰からも評価のない場所で世界に触れることが、次の一歩につながることがあります。
外の世界は、怖いだけの場所ではありません。春の匂いも、光のまぶしさも、誰かとの他愛ない会話も、人の心を少しだけ前に動かします。頑張れ、と言える関係をつくること。そして、頑張ってみようかなと思える場所を増やすこと。それは、私たちしろひげ在宅診療所が目指し、そして「たゆらかたうん」の役割でもあります。遊びは、人生の余白だけではなく、生きる力そのものだと信じています。
山中先生のおすすめ作品や遊びスポット3選
『ブルーピリオド』

講談社 山口つばさ
主人公は迷いながら、苦しみながら、それでも自分の「好き」に出会います。この作品の良さは、「天才の物語」ではなく、「迷う人の物語」であること。「迷っていい」「遠回りしていい」その素敵さを感じてほしい漫画です。
『凪のお暇』

秋田書店 コナリミサト
空気を読みすぎて疲れてしまった人の再出発の物語。何もしない時間も、人生に必要だと教えてくれます。 “お暇”な時間は、決して逃げではなく、自分が自分らしく動き出すきっかけになるのです。
2017年〜2025年、秋田書店A.L.C. DX
すみだ水族館 in TOKYO SKYTREE TOWN ®

暗めの照明と静かな水槽。魚をただただ見ている時間は、頭の中のぐるぐるが少し静まります。何かをしなくてはいけないではなく「見ているだけで幸せ」という場所が私は大好きです。
【NPO法人 しろひげ・たゆらかファンド】
「たゆらかたうん」を制作・発行している「NPO法人しろひげ・たゆらかファンド」では、「たのしく”学ぶこと”でつながる」を始め、「食べること」「体験すること」を通じたさまざまな居場所づくりもしています。
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