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「学校に行きたくない」ある日子どもに言われたら?

不登校の子どもが増え続けています。文部科学省によると、2022年度の小・中学校の不登校児童生徒数は
29万9048人と前年度から22.1%増加し、過去最多となりました。

不登校になる要因もさまざまで、年代や環境によっても異なり、人間関係や学業不振の要因のほかに、発達障がいが起因している場合も。不登校からひきこもりに繋がるケースも多く、社会問題にまで発展しています。ある日、突然子どもが学校に行かなくなったとき保護者は一体、どうしたらいいのでしょうか。

実際に不登校を経験した方や、江戸川区の教育現場を取材しました。

不登校の理由

小・中学生ともに「無気力・不安」が1位。
中学生においては「学力不振」も大きな要因に。

学校の授業についていけないと感じる子どもたちは、自己肯定感の低下やストレスから学校を避けてしまう傾向があります。

不登校の現状

▼不登校児童生徒数の推移

▼学年別不登校児童生徒数

▼学校外の専門機関で相談や指導を受けた状況

※文部科学省「COCOLOプラン」からデータ引用

インタビューで振り返るあの時のリアル

小野寺さん
小野寺さん
(21歳)

当時は親の最後に出る"ため息"を聞くたびにこころが苦しくなりました。

家族の期待に応えられない自分が不甲斐なくて、親に申し訳ない気持ちが常にありました。それでも、親が優しく接してくれたのはありがたかった。

ー不登校はいつ頃から?
中学3年生の夏前です。きっかけは、運動が苦手で、特に体育が嫌だったんです。予行練習の時に「このままでいいのかな?」って思うようになって、みんなが一生懸命頑張っているのに、自分だけ頑張れてないのが申し訳なく感じてしまって…。それから、学校に行きたくない気持ちが強くなりました。

ー不登校中はどんな生活?
最初は、家でゲームやテレビを見たり、猫と遊んだりして、好きなことばかりしていました。
勉強は完全に諦めていましたね。2週間が過ぎたころから、学校や家族に対しても遠ざけたい気持ちが出てきて、家族と一緒にいるのも辛くなって…。唯一の繋がりは、オンラインゲームで友達と話すことでした。

ー当時、周りの人たちにはどうしてほしかった?
ほっといてほしかった。親からいろいろ聞かれても、「自分だって将来のことなんて分からないのに、どう答えたらいいんだろう?」と悩みました。
親の最後に出る"ため息"を聞くたびにこころが苦しくなりました。食事も自分の部屋で食べるようになり、自分からも家族との距離を取っていました。

ー高校進学とこれからの進路について教えてください。
強く説得されて…。通信高校へ。実は子どものころ、カウンセラーになりたいという夢があったのですが、勉強が苦手で諦めていました。ただ、人との出会いから生まれた経験の積み重ねで、 自信がなくても「とりあえずやってみよう」という気持ちに変わって少しずつ自分が変わっていきました。

お母さまの当時の想い
毎日が葛藤の連続でした。今朝は息子が学校へ行ってくれるのか、それともまた欠席するのか。学校への欠席や遅刻の連絡は、私にとって毎回精神的な苦痛でした。「こうするべき」という世間の常識や固定観念に縛られ、それに我が子が当てはまっていないことが、自分自身を苦しめていたのです。周りの目が気になり、つい叱ることも多くありました。どうして我が家だけこんなに大変なんだろうと、ほかの親子と比較しては落ち込む日々。息子がこのような状態になった原因を探しては、過去の自分の行いにさかのぼって反省することもありました。
どうすればいいのかわからないジレンマの中で、誰かを責めることでしか自分を慰める方法がなかったように思います。

お父さまの当時の想い
当時の息子は無気力、ひきこもり、目にも精気を感じられず、父親として、男としての何らかを伝えて人生を正してあげなくては、という義務感には駆られてました。
妻とも対策や方法を話してはいましたが、妻に任せっきりの場面は多かったと思います。時には力ずくで言う事をきかせようと試みた事も多々ありました。
僕の思考や経験、分析では息子を正す事はできず、よく言えば  「見守る」という形に切り替えました。
当時の息子には将来の期待とかはしない、このまま世の中と断絶して家に隠して生きていく、そんな思いでおりました。
入院も苦肉の策ではありましたが、藁をも掴む思いでした。皮肉にも家族で息子を見舞いにいくという行動で、家族の輪が深まったようにも感じました。

同じ悩みをもつ家族に向けたメッセージ
我々親は滑走路 。飛び立つまでの支え役。
ただ飛び立つキッカケは、親じゃない誰かです。と在宅診療所の院長先生には教えていただきました。
きっとキッカケになる「誰か」がいるはず。それがいつなのか、誰なのか、の出会いが鍵かと。諦めないでください。


子どもの心への寄り添い方


しろひげ在宅診療所 山中光茂 院長

先日、江戸川区立篠崎小学校で保護者の方に向けて「子どもの心への寄り添い方」について講演をさせていただきました。私自身、中学校・高校と不登校で学校に行くことができませんでした。


生活環境的にも決して恵まれていたわけでもありませんでしたが、両親からの愛情はいつも感じることは出来ていました。どんな環境だったとしても、安心する居場所が存在することが子どもの支えになる、そう実感しています。
子どもに対して愛情をかけることは大切ですが、愛情と依存を間違えてしまうことがあります。お互いの存在にだけ依存や執着するのではなく、親も子どもも、依存の場所を多様化することで適度な距離を保つことが大切です。


心が弱っている状態の方に「頑張れ」という言葉がタブーとされていましたが最近の研究では、本人にプレッシャーがかからない程度の「ちょっと頑張らせてあげる」ことも必要になるといわれています。私が精神科医として担当している小児の患者様で、状態が悪いところから、ほんの小さな目標を設定することで家から一歩踏み出せるようになり、大きく前進できたというケースをこの目でたくさん見てきました。


子どもが成長する過程で、ストレスを感じる場面は必ず出てきます。子どもに寄り添い、愛情を沢山与えながらも、時には少し背中を押して一定のストレスに慣れさせることで、子どもを自立に導くことそして、親として安心する居場所を作ってあげることがとても重要です。

江戸川区立篠崎小学校での講演の様子

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