たゆらかたうんの表紙にもある「こころの障がい」。
いろんな特性を含めた表現ですが、みなさんはどんなことをイメージしましたか?今回は特にみなさんに知ってほしい5つの障がいをピックアップ。精神科医の山中先生に話を聞きました。

「こころの障がい」は、一律の分類に必ずしも当てはまるものではありません。医師が分類しても、その症状は人によってさまざまです。
病名に関わらず、今の状態とそれが及ぼす社会生活の中での生きづらさや辛く感じることに周りが寄り添い、それぞれの個性や求められる部分に丁寧に対応していくことが大切です。病気なのか、その人の個性なのか…ちょっとした心配事でも、抱え込まずに、まずは近くの医療機関や行政機関に相談してみましょう。
精神障がい
■ 統合失調症
脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで、考え方や感じ方にまとまりが無くなったり、抑うつ・興奮状態になったりする病気。全人口の100人に1人の割合で発症すると言われています。
よくある症状 | ・妄想や幻覚 被害妄想など明らかに誤ったことを信じたり、幻聴・幻視など実際は起きていない事柄を感じる。 ・興奮 いろんな考えが頭の中に次々と浮かび、言動が増えたり、怒りっぽくなる。 ・意欲の低下 やる気が低下し、寝たきりになったり、好きな物事にも興味がなくなる。 ・意欲の低下 思考力が低下し、会話が困難に感じて、口数が減ったり、会話の内容が薄くなる。 |
Topic | 体調変化のサインに気づこう “統合失調症”という1つの病名の中には、いろんな症状や治療経過があり、その人の人格にも影響していきます。そして、数年単位の期間でゆっくりと治療が進むため、人生という長いスパンでこの病気と上手に付き合うことが必要です。 「体調が悪化する少し前には、いつも寝つきが悪くなる」「理由がなく、気持ちが落ち着かない、漠然とした不安感が出てくる」など、体調が悪くなる前の”サイン”を理解し、医療機関へ相談するようにしてください。 |
■ 気分障害
日常生活に支障が出るほど気分の変動が激しくなる病気の総称で、抑うつ状態が続く「うつ病」と、躁(そう)状態と抑うつ状態をくり返す「双極性障害」があります。
2つの分類 | ・うつ病 気分の落ち込みが激しく、何もやる気が起きない無気力感、不安や焦り、イライラ、集中力の低下などの精神症状が長期間続く状態。不眠・体の痛み・めまいなどの身体的な症状がでることもあります。 ・双極性障害 ハイテンションで過活動になったり、気持ちが大きくなる躁状態と、無気力で気持ちが落ち込むうつ状態を繰り返す病気。こころの変化に早めに気づくことや薬の内服が再発を繰り返さないために大切になります。 |
Topic | 気分障害と適応障害は違う病気? 「気分障害」は、気分の著しい変化が一定期間続く病気で、持続的な感情の病気という意味で付けられました。一方、適応障害は自身のいる環境や状態にうまく適応できず、ストレスが過剰にかかった状態で、そのストレス要因を取り除けば症状が改善できる、一過性の状態です。 |
発達障がい
■ ADHD(注意欠如多動症)
不注意、多動性、衝動性といった特性がみられる発達障がい。こうした特性は幼い子どもによくみられる特徴と区別することが難しいため、幼児期にADHDの診断はでづらく、就学期以降に診断されることが多いです。また、年齢とともに特性のあらわれ方が変化することもあります。
主な特徴 | 不注意:ものごとに集中できない、忘れ物が多い 多動性:じっとしていられない、順番を待てない 衝動性:思ったことをすぐに言動化してしまう |
Topic | 発達障がいの治療について ADHDの症状は薬である程度、抑えることができます。「薬は副作用が出る。量がだんだん増える。」とマイナスに感じる方もいますが、体の負担が出ないように、医師が薬の調整をしますし、年齢とともに薬がいらなくなる場合もあります。薬を必ず飲んでほしいわけではありませんが、日々の生活をより過ごしやすくする選択肢の1つとして医療機関と一緒に考えていきましょう。 |
■ ASD (自閉症スペクトラム)
コミュニケーションや社会的な立ち振る舞いが苦手、こだわりが強いといった特性から診断されます。生まれ持った特性であり、近年では早い時期だと1歳半の乳幼児検診で見つかります。特性自体を薬で治すことはできませんが、本人のことを理解し、それに合わせた教育や支援をすることで、日常生活での生きづらさを軽減させることができます。
Topic | スペクトラム ってなに? “スペクトラム”とは、“境界が明確ではなく連続している”という意味があります。かつては、自閉症、アスペルガー症候群といった名前や、軽度・重度などの程度で分類していましたが、自閉症で見られる特性は健常な人にもみられるものであるため、数字や名前で線引きをせず、グラデーションのように個々の特性として捉えようという世界的な考えに変わりました。 |
■ LD(学習障害)
学習におけるスキルに困難さがみられる発達障がい。「聞く」「読む」「話す」「書く」「計算する」「推論する」などの学習技術から1つ以上の項目で、習得に支障が出ることをいいます。
Topic | 学習障害は「勉強ができない子」? 学習障害があっても子どもの頃は「自分は勉強ができない」と思うだけで、適切な自己理解や周りへのヘルプが出せないことがあります。周りと自分を比べて自信が持てない、学校へ行きたくないといったネガティブなこころ、生活にもつながることも。ですが、学習障がいがある子=「勉強ができない」わけではありません。学習を補うようなステキな個性や能力を持つ子もたくさんいます。本人が得意なことやできることを理解し、それに合わせたサポートを支援機関と一緒に考えていくことが大切です。 |
こころの障がい あいうえお

今回紹介した内容は、こころの障がいのほんの一部であり、実際の特性や必要な配慮は人によって異なります。一人ひとりの障がいを理解するために、一人ひとりが“たゆらか流あいうえお”を。