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ほんのイチオシ vol.1  前向きになれる本

司書さんが選ぶ、ほんのイチオシ
今回は「前向きになれる本」として2冊紹介いたします。

『なんていいひ』 リチャード・ジャクソン


『なんていいひ』
小学館
リチャード・ジャクソン/文
スージー・リー/絵
東直子/訳

【POINT】
・優しい絵に癒される
・こころが軽くなる

雨の日は、それだけで憂鬱になる人も多いと思います。特に月曜日の朝、仕事で出かける時などは最悪な気分です。


歌人の東直子さんが翻訳したこの本の原題は「THIS BEAUTIFUL DAY」。ページをめくるたびに、だんだんと空が明るくなってきて、はじめは白と黒と水色の三色ですが、どんどんカラフルになっていきます。部屋から外へ、丘から空へ、いつか雨はあがって気持ちのいい風が吹き抜けていきます。そして、国際アンデルセン賞作家のスージー・リーさんの、正確でのびやかな線で描かれた、いきいきとした子どもたちと優しい風景が、心を軽くしてくれます。

雨の日も、少しだけ遊び心を思い出して、雨の美しさを感じられたら、いい日になるかもしれません。

『サムのこと 猿に会う』 西加奈子


『サムのこと 猿に会う』

小学館
西加奈子

【POINT】
・日々の何気ない出来事に背中を押される

「サラバ!」や「さくら」などで有名な西加奈子さんの初期の3作を収録した一冊です。


不安定に生きる男女5人が学生時代の仲間「サム」の通夜に向かう「サムのこと」。少し冴えない仲良し女子3人組が温泉旅行へ向かう「猿に会う」。小説家志望の男子高校生と同じ野球部の友人が、太宰治の影を追うようにして向かった青森で一人の女性と出会う「泣く女」。


決して大きな出来事が起きるわけではではないけれど、日々の中の何気ない出来事が、登場人物たちにとっては何かを少しだけ前に進めるきっかけになったのかなと思いました。


私は中でも「サムのこと」が好きで、特に、終盤での主人公・アリの言葉が印象に残っています。人生でどんなことが起こっても、現実は常にそこにあって、日常は続きます。でもそんな変わらない日常があるからこそ、人はどんなにつらいこと、悲しいことがあっても、少しずつ未来に進みながら生きていけるのだと思いました。悲しくて、切ないけれど、優しく、温かい気持ちになれる一冊です。

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