たゆらかたうんの表紙に「こころに障がいがある方のため」という言葉を使いました。この冊子を作ろうと考えたときに、「誰を対象に伝えたいか」ということを真剣に考えました。その中で、冒頭の言葉を使いながらも、「こころに障がい」ってどういうことだろう、本当にこの言葉でよかったのだろうかと改めて何度も考えさせられます。
私は精神科医として、いろんな患者さんとのご縁を頂きます。医師として患者さんを「病気」と捉えることで、薬を使ったり、カウンセリングを行い、本人や家族の幸せにつながることがあるのは間違いないです。
ただ、「病気」というのはあくまで医師側からの視点であり、患者様本人やその家族からすればその状態がその人らしい自然な状態なのかもしれません。
「障がい」という言葉からは、「正常との違い」というニュアンスがありますが、本当は「こころ」には正常とか異常とかはありません。生まれてきて、育ってきた「こころ」はその人にとって全てであり、決して「変えるべきもの」ではありません。
ただ、いわゆる「障がい」によってその「こころ」が自分にとって、または身近な他人にとって辛いものであったときに、それを「治療する」ことやその状態が幸せになるような環境をつくることは大切になります。
しろひげ在宅診療所では、同じような「こころ」に痛みを持った方々が集まれる場所としての「よりみち屋」を運営したり、医療や福祉の専門職が自宅に伺ってこころに寄り添ったり、また、職員一同で自宅での生活環境を調整したり、そんな仕事をしています。
幸せにはいろんな形があって、「障がい」はその幸せの妨げにはならないと思っています。
「障がい」があるからこその幸せ、「障がい」を認めたからの幸せ、「こころに障がい」があるということを受けとめながら、その人そのものの素敵さを生かせるきっかけとなる「たゆらかたうん」であれたらと感じています。