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第4 回 心理士 田中庸介さんのポジティブ談話室 自分らしく居られる場所を探すためにできること

みなさんは“ここに居ると落ち着く”、“この人たちと居ると心地良い”と感じられる場所はありますか?パッと思い付く方もいれば、そんな場所はないと感じられる方もいらっしゃいますよね。

いろいろな調査を見てみると、年齢関なく居場所がないと感じている方、孤独を感じている方の割合が増加傾向にあります。孤独を感じて“どこか空っぽな感じがする”、“自分とはいったい何なんだろう”、“社会から必要とされていない”といったネガティブな考えや気持ちに包まれた経験がある方も少なくはないでしょう。


本コラムのテーマであるウェルビーイングの観点からも孤独という社会的経験は身体や精神へ負の影響を与えるため、人と人とのつながりを育むことはとても大切なものとして扱われます。

ただ、もし今あなたが孤独を感じていたとして、いきなり“外に出て人とつながれる場所を探すと良い”と言われたとしたらどうでしょう。動いた先を想像しただけで強い不安感に襲われて身がすくみ、動けなくなってしまうのではないでしょうか。一足飛びに解決しようとするのではなく、一人ひとりに合ったペースで歩みを進めていくことが大切ですよね。


そこで、今回は孤独を感じていてもこれから人とのつながりを持つためにできることを3つのステップで紹介していきます。

まず、1つ目のステップは考え方(捉え方)についてです。孤独を感じている時は“孤独な自分”というネガティブなラベルを自身に貼ってしまうことがあります。このようなラベルは思考、感情、行動に影響を与えるので注意が必要です。そのため、まずは「孤独はあなた自身を表すものではなく、あなたが何を必要としているのかを示してくれるもの」だと捉えることが重要になります。

この視点を持ち、ステップ2として自分自身の感情に耳を澄ましてみましょう。落ち着ける空間で穏やかに目を閉じ、自身の感情にそっと意識を向けてみてください。そして、“今、自分はどんな気持ちだろう”、“どうしてこの気持ちなっているんだろう”と思いを巡らせ、“そう思っているんだったらこういう気持ちになるよね”と自身の感情を受け入れてみましょう。自身の感情を理解し、認識を高めようとすることで心に余白が生まれ、そのスペースの中で他者とつながるための余裕が少しずつ育まれていきますよ。


最後のステップ3として、人とつながることができるコミュニティに足を運んでみましょう。これまでのステップを経て自身のことを受け入れてきた方は他者を受け入れられる強さも育まれてきていますので、そのコミュニティでの経験を通して素晴らしいメンバーの一員になれると私は信じています。
 
“ここに居てもいいんだ”という所属感のある場所を見つけられると社会的ウェルビーイングが満たされていき、身体・精神へも良い影響が生まれていきます。

そしてその居場所からはきっと“あたたかさ”、“安心・安全”、“尊重”をはじめとしたポジティブな言葉が溢れ、いつでも帰れる場所となり、自身の内外の世界を広げる大きな支えになるでしょう。

あくまでペースは一人ひとり異なることを前提として、自身と他者を尊重しながら一歩ずつ自分らしくいられる居場所を探していきましょう!

田中 庸介 (臨床心理士/公認心理師)

東証上場企業(障害福祉事業)にてマネジメント職、調査研究、社員教育、障害者雇用コンサルティングなどに従事。その後、イースト・ロンドン大学院でMAPPCP(応用ポジティブ心理学&コーチング心理学修士課程)修了。現在は教育・福祉・精神科医療などの領域でウェルビーイングを育むための研修/カウンセリング/コーチングを実践中。

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